
労働災害事例:車両系
分類:車両系
護岸工事において、パワー・ショベルと法面との間に挟まれる。
【発生状況】
護岸建設工事現場において、作業者がパワー・ショベルの
バケットと護岸法面との間に挟まれた。
この工事は、道路に沿って流れる河川の護岸を建設するもので、
パワー・ショベルでブロックを吊って運搬し、護岸の法面上に
並べた後、パワー・ショベルのバケットで砕石を運んで、並べ
た護岸ブロックの裏側に入れ、さらにブロックとの隙間に生コ
ンを流し込むというものであった。
災害発生当日、作業責任者外作業者4名で護岸ブロックを護岸
法面上に並べる作業を行っていたが、ミキサー車が到着した
時点で、ミキサー車から出る生コンをパワー・ショベルのバ
ケットに受け、道路と仮設道路の中間に設置した「受け舟」
と呼ばれる容器に移し替える作業に切り替えた。ところが、
生コンの一部がバケット内に残ったので、被災者が手作業でそれをブロック隙間に流し込む作業を行った。この作業中に、被災者がパワー・ショベルの運転者に大声で何か呼びかけたが、良く聞き取れないので、運転者が運転室左側の開いているドアーから身を乗りしたとき、腹部が操作レバーに触れ、バケットが前方に動き、被災者がバケットと護岸法面との間に挟まれ、内臓破裂により病院で死亡した。
【原因】
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誘導者を配置して誘導させていないのに、作業者をパワー・ショベルの作業半径内に立ち入らせていたこと。
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運転者が、安全装置である操作レバー・ロック装置を使用せずに運転室左側の開いているドアーから身を乗り出したこと。
腹部が左側操作レバーに触れ、作業装置が作動してバケットを前方に押し出した。 -
被災者がパワー・ショベルのバケットと法面との間で作業をしていたこと。
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作業者とパワー・ショベルの運転者との間の合図の連絡方法が不十分であったこと。
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現場責任者が一時的に作業現場を離れていたために、予定外の作業に対する安全確保について適切な指示がなされなかったこと。
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護岸ブロック積みの作業工程が完了に近づき、作業に対する慣れがあったこと。
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安全管理体制が不十分で、安全管理が徹底していなかったこと。
【対策】
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車両系建設機械に接触するおそれのある箇所で、作業を行わせないこと。
接触のおそれのある場合には、誘導者の配置を行うとともに、適切な合図を行わせることが必要である。 -
運転室から身を乗り出すなど操作レバーを誤作動させるおそれのある行動を運転者がとる場合には、あらかじめ操作レバーのロックを行うことを周知徹底すること。
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やむを得ず、パワー・ショベルのバケット付近で別の作業を行わせる必要がある場合には、上記1の対策に加え、誤操作によりバケットが動いた際に、法面に挟まれたり、法面から掃き落とされたりすることのない箇所で作業を行わせることの周知徹底を図ること。
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安全管理体制を整備し、安全管理を徹底すること。
現場の安全推進者を選任し、管理者が一時的に作業現場を離れる場合には、代理者を指名して安全管理を行わせるなど安全管理体制を整備する必要がある。


