
労働災害事例:車両系
分類:車両系
ドラグ・ショベルでL型擁壁を吊り上げた時、吊り具が外れて吊り荷が転倒。
【発生状況】
ワイヤロープに取り付けられた3個の吊り上げ用専用金具をL型
擁壁に装着してドラグ・ショベルで吊り上げようとしたところ、
2個の吊り上げ用専用金具が外れたためL型擁壁が転倒し、作業
員Aが下敷きとなり死亡、作業員Bが負傷した。
災害発生当日、作業員Aが、L型擁壁の長辺側2箇所および短辺
側1箇所に埋め込まれたアンカー頂部に吊り上げ用専用金具を
装着し、ドラグ・ショベルに背を向けて立ち、左手で吊り上げ
用専用金具を押さえ、運転席のオペレーターに「アーム上げ」
の合図を行った。
合図を受けたオペレーターがドラグ・ショベルのアームを上げ
てL型擁壁を吊り上げようとしたところ、長辺側の2個の吊り
上げ用専用金具が外れてL型擁壁が転倒したため、作業員Aは
仰向けの状態のまま、胴体部分がL型擁壁の長辺部分の下敷き
となった。また、付近でL型擁壁を据え付ける位置の測定をスケールで行っていた同僚の作業員Bも転倒したL型擁壁に頭部と右膝が当たり負傷した。
【原因】
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吊り上げ用専用金具をL型擁壁アンカー頂部に取り付ける際に専用金具の頭部を所定位置まで回転させていなかったため、専用金具がアンカーに確実に装着されない状態でL型擁壁の吊り上げ作業が行われたこと。
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吊り上げの合図を行う時に吊り荷から離れることなく専用金具付近を左手で押さえながら吊り荷の近くにいたため、地切りした吊り荷が転倒した際にその吊り荷の下敷きとなったこと。
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被災者およびドラグ・ショベルのオペレーターともに、玉掛け用具の装着状態についての確認が不十分であったこと。
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技能講習を修了していない者に機体重量が3トン以上のドラグ・ショベルの運転を行わせていたこと。
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作業標準が整備されておらず、関係労働者の危険認識が不足していたこと。
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作業の性質上やむを得ないなどの事由がないのに、ドラグ・ショベルによる用途外使用である吊り上げ作業を行ったこと。
【対策】
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吊り上げ用専用金具は、確実に装着されたことが確認できるロック機構を設けるなど構造的な改善を検討することが必要であること。
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玉掛け作業を行う際は、吊り荷の落下や転倒を防止するため、玉掛け用具の装着状態の確認等を徹底すること。
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荷の吊り上げ、吊り降ろし等の作業を行う際は、吊り荷との接触の可能性がある場所へ労働者を立ち入らせないこと。
また、玉掛け者は、吊り荷の落下などによる危険を及ぼす範囲外に退避してから合図を行うこと。 -
L型擁壁の吊り上げ、吊り降ろし等の作業では移動式クレーンを使用し、法定資格を有する者を運転業務に就かせること。
玉掛け用ワイヤロープ等を掛け、または外す業務は、玉掛け技能講習を修了した者または玉掛けの業務に係る特別教育を修了した者に行わせること。 -
施工計画作成時に、あらかじめ作業手順を作成し、作業指揮者にこの手順に沿って作業が行われていることを監視させること。
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作業員に対して、玉掛け作業の危険性およびその防止方法について安全教育を実施すること。


