
労働災害事例:熱中症
分類:熱中症
舗装工事中の熱中症。
【発生状況】
車両整理の業務に従事していた作業者が、アスファルトの照り返しによる気温の上昇により意識を失って倒れ、死亡するに至った。
災害が発生した工事は、建物を解体した跡地を整地、舗装し、駐車場を拡げるものであり、作業者Aは、コンクリートブレーカーを用いてはつり作業に従事していた。
災害当日の朝、出勤した作業者Aの体調が思わしくないことから、現場所長Bは、Aに帰宅するよう指示した。しかしAは、車両整理なら大丈夫だと言い、旗を持って工事現場の車両整理業務に就いた。車両整理業務は、駐車しようとする車が工事の妨げにならないよう、運転手に駐車位置の指示をするものであり、はつり作業のような重筋労働に比べれば、身体にかかる負担は小さいものである。
午後2時過ぎ、Aは突然、その場にフラフラと座り込んだ。これを見ていたBは、Aを日陰に移し、水分を補給させるとともに、救急車を手配した。Aは座り込んでから約30分で救急車により近隣の病院に収容されたが、医師による介護にもかかわらず、約4時間後に死亡した。
なお、災害当日の気象状況は、近隣の消防署の記録によると、午後2時現在で気温38.0℃、湿度72%、風速2.6m/秒であるが、アスファルトの照り返しがあったことを考えると、Aが作業していた場所での気温は40℃を超えていたと想像される。また、Aには、持病は特になかった。
【原因】
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Aの災害当日の作業内容自体は、重筋作業とはいえないが、前日までの疲労が蓄積されていたことに加えて、高温、多湿、アスファルトからの照り返しといった劣悪な作業環境にあったこと。
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体調が思わしくないにもかかわらず、休養をさせなかったこと。
【対策】
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作業開始前に、作業者の健康状態を確認し、健康がすぐれない場合には、作業を取り止めること。
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作業場が高温又は多湿になる場合には、日中の作業量を減らすなど作業計画を工夫すること。
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また、作業場所の近くに日陰をつくることにより、適宜、作業者が休憩できるようにするとともに、適度の水分および塩分を摂取すること。

