
労働災害事例:高所作業車
分類:高所作業車
高所作業車を旋回させた際、バケットと構造物に挟まれる。
【発生状況】
パイプラックの塗装を行うためバケット上で高所作業車の旋回操作を行っていた作業者が、パイプラックと激突するような形でバケットとの間に挟まれ死亡した。
災害発生当日、被災者ら5名の作業者は、化学工場構内の地上約6mの高さにある配管を支えるパイプラックの塗装工事を行っていた。工事では足場を組み立てず、リースの高所作業車が用いられ、その工程は、さび落としのための研練研磨作業、補強塗り、下塗り、中塗り、上塗りの5つの作業からなっていた。当日は2週間の工期のうちの6日目であり、はけを用いての下塗り作業が行われていた。
高所作業車は、ブームが長さ約6~13.5mまで伸縮し、仰角-20~75°まで起伏するもので、作業車の走行、ブームの伸縮、旋回、起伏、バケットの首振りなどの操作はバケット上の操作盤から行えるようになっていた。
被災者は他の作業者とともに2名でバケット上でのパイプラックの下塗りを行い、その日の作業を終わらせた後、地上に降りるためバケット上の操作盤でブームの操作を行っていた。その時、同乗していた作業者は、バケットの中でかがみこんで塗料缶などの片付け作業を行っていた。
その時の高所作業車、パイプラックの状況を図1に示す。災害発生時、バケットを路上に下ろすため、被災者が図2の[1]から[3]の位置までブームを縮めながら旋回させようとした時、[2]の位置でパイプラックに後向きに激突し、操作盤を囲む形で設置されている保護フレームとの間で挟まれたものである。事故後の調査で、事故時のバケットの移動速度は通常どおりの4.9~6.5m/秒であったと推定された。
地上作業を行っていた3名は、当日の作業の片付けを行っていた為、災害発生時の状況は目撃していなかった。
【原因】
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高所作業車を操作する者が、バケットの周囲の状況を確認せずにブームの操作を行ったため、パイプラックに激突したこと。
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パイプラック近傍という、接触・激突の危険性の高い個所での高所作業車の操作にもかかわらず、旋回の速度が速過ぎたこと。
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ブームの操作の際、補助作業者あるいは地上監督者の誘導が無く、操作ミスの防止および緊急の作業の停止ができなかったこと。
【対策】
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高所作業車の操作を行う者に対しては、あらかじめ高所作業車の作業に伴う危険性を認識させるとともに、操作方法等についての安全教育を行うこと。
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高所作業車を用いて作業を行う時は、あらかじめ作業を行う個所の周囲の状況、機械の種類および能力、作業の内容に適応する作業計画を作成すること。
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作業指揮者および作業監督者を定め、作成した作業計画に基づいて作業を行うこと。
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