
労働災害事例:墜転落
分類:墜転落
法面に落石防止用防護ネットの取付作業中に転落。
【発生状況】
県道の法面からの落石防止用防護ネットの設置作業に
おいて発生した。
災害発生当日、被災者は、同僚と2名で県道の法面
からの落石防止用防護ネットを固定するため、法面の
作業箇所へ移動したが、現場にいた事業主は、防護
ネットの吊り上げに使用するトラッククレーンの準備
を行っていた。
事業主は県道を通行する一般車両を通すため一時的に
クレーンを道幅の広い箇所へ移動させ、その後再び現場へ戻ったところ、頭部を下流側に向けて現場道路上に倒れている被災者を発見した。
直ちに、被災者を病院へ搬送し手当てを行ったが、災害発生から約1時間後、頭蓋骨骨折等により死亡した。
災害発生時の被災者の作業状況は同僚も事業者も目撃していないが、その直前には道路上約25mの位置に設置された支柱および水平ロープに落石防止用金網の上端を取り付け、約5m下方の位置で中間支柱を建て込む作業を行っていたので、その後の動作途中に墜落したものと考えられる。
なお、被災者が作業を行っていた法面は、勾配が80度以上の急峻な崖であり、ロープを命綱で身体を支えなければ自立できない状態であり、直前までは命綱を使用していたが、法面上で作業中に作業箇所を移動するため、安全帯を外した際に約6m下に墜落したものと想定される。
【原因】
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この災害の大きな原因は、身体のバランスを取れないほど急勾配の作業環境であったにも拘わらず、移動に際して命綱を使用していなかった為、バランスを崩して墜落したものと考えられる。
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このように墜落危険のある場所で作業を行う場合には、あらかじめ墜落防止措置を含めた作業手順を作成し、作業者に対してその手順により確実に作業を実施するよう教育訓練を行うことが必要であるが、手順の作成と教育訓練は行われていなかった。
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災害発生当日、元請の現場代理人は現場に来ておらず、また災害発生現場を指揮していた2次下請の事業者も、災害発生前後における作業内容、状況等について全く把握していないなど作業現場での安全管理が行われていなかった。
【対策】
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墜落による危険がある場所で作業を行う場合には、安全な作業床の確保、命綱の取付設備などを含む作業方法について事前に十分検討し、作業計画を作成して関係作業者に徹底することが必要である。
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作業手順を作成し関係作業者に周知徹底する為、あらかじめ十分な教育訓練を実施することが必要である。
なお、作業手順はどの作業を行う場合にも必要であるが、特に危険な高所作業においては移動、昇降等の作業の際に危険が大きいので、命綱の使用要領を中心に手順を定めることが必要である。
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工事現場全体の安全管理を行う組織を、元請を中心として設置し、作業計画の作成、連絡調整、機械設備の安全性の検討、現場責任者(統括安全衛生責任者)による作業場所の巡視などを行うことが必要である。


