
労働災害事例:法面崩壊
分類:法面崩壊
護岸の石積作業中、法面が崩壊。
【発生状況】
水路復旧工事において、作業員2名で護岸の石積作業を
行っていたところ、法面が崩壊した。
災害が発生する前日、作業箇所上部の法面から浮き石が
転げ落ちる状況にあったので、飛来・落下防止用の
グリーンネットを張っていた。
災害発生当日、現場責任者ほか4名の作業員で石積作業を
行っていた。作業員A、B、Cの3名が玉石を人力で
積上げる作業を、オペレーターはドラグ・ショベルを
運転し、玉石を固定する生コンを打設する作業をしていた。
作業員Bと作業員Cの2人が石積作業を行っていたが、現場責任者の指示により、作業員BとCは玉石を積上げた箇所の手直しの作業を行っていた時、石積作業箇所付近の法面から、幅5m×高さ3m×奥行1mの大きさの岩盤(崩壊土量約10m3)が剥離して崩壊した。その時、現場にいた現場責任者が岩盤の崩壊に気が付き大声で危険を知らせたが、逃げ遅れた作業員Bは頸部に崩壊した直径60cmの岩の直撃を受け死亡し、作業員Cは左足に直径40cm程度の岩が当たり負傷した。
【原因】
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施工箇所および周辺における事前の地質調査について、ボーリング等の調査を行わなかったため地質・地形を考慮した適切な施工計画が作成されていなかったこと。
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地山掘削作業主任者である現場責任者による工事施工中の作業箇所および作業箇所上部を含めた周辺の作業開始前の地山の状況についての点検が行われていたが、点検結果に基づく措置、点検記録の作成などが不適切であったこと。
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岩盤の剥離の前兆とみられる法面からの落石に対し、飛来・落下防止用のグリーンネットによる措置しか講じていなかったこと。
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法面からの岩盤の剥離による危険のおそれがあるのに、剥離、亀裂等の点検の方法、作業員への連絡方法、剥離、亀裂がある場合の対処方法等を記載した安全作業マニュアル等が作成されていなかったこと。
【対策】
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地山崩壊のおそれのある箇所での工事を施工する場合には、事前に施工箇所および周辺の地質、地形および湧水等の状況について調査し、その結果に基づいて、安全な工法を定め、安全を考慮した施工計画を作成して、その施工計画に基づいて作業を行うこと。
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法面の剥離による崩壊や落石等の危険がある場合には、作業員への連絡方法、剥離、亀裂がある場合の対処方法等を記載した安全作業マニュアル等を作成し、これに基づいて安全に作業を実施すること。
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作業箇所およびその周辺の地山で割れ目、亀裂および湧水等の有無について作業開始前に点検者を指名して点検を実施すること。
また、降雨時、降雨後および地震発生後についても作業開始前に地山の状況について点検を実施し、異常のないことを確認してから作業を開始すること。
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作業箇所およびその上部において、岩盤の崩壊のおそれがある危険箇所で作業を行わせる場合には、法面へのコンクリートの吹き付け、土止め支保工を設置するなど崩壊防止に対して十分な強度を有する防護措置を講ずること。

