
労働災害事例:タワークレーン
分類:タワークレーン
タワークレーンの組み立て作業中、振れた吊り荷を手で止めようとして、吊り荷とともに墜落した。
【発生状況】
鉄道橋梁建設工事において、クライミングタワークレーン
のタワー部材の吊り上げ作業中に発生した。
災害発生当日、タワークレーンのクライミング作業を行う
計画で、まず移動式クレーンを使用して組み立て用の3本
のタワー部材をタワークレーンの作業半径内に移動させた。
次に、1本目および2本目のタワー部材の接合を終え、3本
目のタワー部材を吊り上げた。クレーン運転者Aは、タワ
ークレーンで3本目のタワー部材を所定の位置まで吊り上
げようとした時、ジブを起こし過ぎ、クライミングのス
イッチを入れていなかったので起伏のリミットスイッチ
が利き、タワー設置所定箇所からタワー部材の幅の半分
くらい内側(上部旋回体の中心側)の位置でジブの起伏
ができなくなった。この時、同僚Bと運転者Aは、話し
合ってリミットスイッチを外すことになり、Bがリミットスイッチを外してAに合図した。
Aがジブを倒し、所定の位置に下ろそうとしたところ、吊り荷が上部旋回体の外側に振れたので、Aは、運転室から出てこれを手で抑えようとした。同僚Bが荷の振れた方向を見るとAの方に寄ってきた吊り荷と手摺の間に挟まれ、手摺と共に墜落するAを目撃した。
Aは、高さ24mのデッキから墜落し、死亡したものである。
【原因】
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クレーンの運転者が、吊り荷の動く方向に立ち入り、荷を手で止めようとしたこと。
同僚の直前の目撃から、運転者は吊り荷がそのまま振れると手摺にあたってしまう状況を見てとっさに行動したが、過大な荷振れの勢いを止められず手摺と共に墜落した。 -
クレーン運転特別教育の正規教習時間を受けていない者にクレーンを運転させたこと。
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Aはタワークレーンの組み立ての経験は数回あり、クレーン運転の経験についてもある程度認められるが、クレーン運転特別教育を正規の教習時間受けた事実は確認されていない。
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クレーンの運転者が、クレーンの運転には未熟であったこと。
元請での危険予知活動、事業者によるミーティングなどによって、吊り荷の危険性についての認識はしていたものと思われる。しかし、玉掛けの講習を受けているが、その修了試験は不合格となっており、クレーンの運転に必要な力学的な知識は不足していたと思われる。 -
事業者は、作業者への安全教育が不十分で、クレーン運転の資格のない者に運転を行わせており、適切に安全管理を行っていなかったこと。
【対策】
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事業者は、吊り上げ荷重が500kg以上、5t未満のクレーンの運転を行わせる場合は、運転する作業者がクレーン特別教育を修了していることを確認し、就労させること。
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吊り荷の動く方向へは接近をしないよう安全教育を徹底すること。
また、吊り荷のコントロールは、介添えロープ等で行うよう指導すること。 -
毎日の作業打ち合わせを行い、作業責任者、作業分担内容を確認し、記録に残すとともに確実にこれを遵守させること。
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やむを得ない場合を除き、起伏等のリミットスイッチの機能の解除を行なわないこと。
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元請事業者は、下請事業者と連携を密にして、現場の巡視を定期的に実施し、安全管理を徹底するとともに、クレーンの運転、玉掛けの作業については、特別教育終了者、技能講習修了者、免許取得者等の有資格者が就業できるように指導援助すること。


